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Hiromoto Toeda Archive
戸枝 陽基(とえだ ひろもと)ワールドへようこそ。
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街の中でふわりふわりと考えるvol.3「レイコー・プリーズ」

 ふわりは、障害のある方向けのカルチャーセンターというイメージで、いろいろな余暇・文化活動の教室を毎月行なっている。ふわりに見学にきた人に、その各教室の説明をしている時に必ず怪しまれるのが、英会話教室だ。
 
 「僕の小さい時、ドリフの荒井注がThis is a penってTVで言ってて、何かかっこいい気がして、僕も意味もわからずやたら使ってたんですけど、英語って、そういう、音の楽しさとかあって、参加者の皆さんはその辺りで楽しんでいるようです。」と僕が的確なような、それでいてなんとなく間の抜けた説明をすると、見学の人々は取り合えず「ふーん」と納得してくれる。
 
 「うーん、理屈はわかるけど、どんな様子なのか想像がつかないわ」という意味であろう「ふーん」は、実はとても的を得ている。あの英会話教室の様子は、一度見てみないとわからない。今だから正直に言うけど、本当は、僕自身も開始前は、英会話教室が成り立つのかどきどきしていたくらいだから。
 
 そんな、個性的なふわりの英会話教室に先日参加していた時のこと、ちょっと驚くことを講師の先生から聞かされた。
 
 その日は、喫茶店に行った時のことを想定して、喫茶店の店員との会話や喫茶店のメニューなどの単語を習っていた。僕が講師の先生の話そっちのけで、大学受験時の英語の偏差値37.4を棚に上げて、隣の参加者の方にコーヒーのヒーは下唇を噛みながらフィ〜だなどと、とってもどうでもいいことを熱心に教え何回も一緒にやっていた時に、問題の発言が起こった。
 
 「先生」と参加者の一人が手を挙げる。「冷たいコーヒーは、やっぱ、アイスコーヒーなんですかね?」
 
 そりゃ、そうだろうよと僕があははと笑っていると、先生はまったく笑わず、困った顔をしながら言った。「うーん、私が知っている限り、アメリカでは冷たいコーヒーは、飲まないですね」
 
 「オーゥ」ちょっと外国の方と話をして自分まで変になまちゃった人のようなイントネーションで皆驚く。変に興奮して、僕は先生に聞いた。「じゃあ、アメリカ人は真夏でも、我慢して熱いコーヒー飲んでるの?」
 
 先生は、さらに困り顔で答える。「私もそんなに何年もアメリカにいたわけじゃないから、もしかしたら冷たいコーヒーがあるかも知れないけど、基本的にアメリカ人はコーヒーはホットで飲むものだって考えていると思う。夏はコーラとかあるし。」
 
 そこまで聞いて、僕の中で、いろいろな妄想が膨らむ。「ひょっとして、アメリカ人は、コーヒーを冷やして飲むと美味しいってことに気付いてないんじゃないか?」僕はとてもわくわくしてきた。シアトルの街角で、アイスコーヒー専門店を夏季限定でやったら滅茶苦茶儲かるんじゃないだろうか。
 
店員 「メチャメチャヒエタ、コーヒーハ、イカカデスカ〜?」
ボブ 「オイ、ナニイッテンネン。ヒエタコーヒーナンテ、ウマナイヤロ」
店員 「ヒトクチ、ノンデミテクダサ〜イ」
ボブ 「アンタメチャイウナ。ナンデワシガ、ノマナアカンノヤ。シバクゾ!」
店員 「ソウイワズ、ササ、グットヒトクチ」
ボブ 「ソウカァ。ソナイニイウナラ、ヒトクチダケ、ノンダロウヤナイカイ。ダイタイ、コーヒーミタイ、ヒキタテヲ、アツアツデイクカラ、ウマイン…、ウン?…、ナンヤ…?…!、ヒエタコーヒー、ウマイガナ!?ナンデイママデ、コーヒーヒヤステ、キイツカヘンカッタンヤロ?」
 
 こんな会話が、展開されて、とえちゃんマークの「レイコー」がジュウドーやゲイシャのように英語化されるくらいヒットするかも知れない。ふわりなんてやっている場合じゃないんじゃないか。ピカチュウの次に日本発でアメリカを席巻するのはとえちゃんかも知れないと密かに興奮する毎日だ。
 
 果たして、本当にアメリカでアイスコーヒーが流行るかは、やってみなければわからないが、ヒット商品とかブームと言われるものは、生活に身近で、誰もが薄々必要性を感じており、誰も手をつけていない所に生まれるといわれていることは確かだ。潜在的なニーズの掘り起こしからブームは生まれるということで、その条件には合っているように思われる。
 
 最近、いろいろな地域の方々と話していて実感しているのだが、「障害があっても地域で暮らし続ける」ということも、この条件に合っているようだ。
 
 どこか遠くの進んだ地域で、とても重い障害のある方も地域生活をしているということは、皆さん薄々知っている。でも、それを見たこともないし、ましてや体験したことはない。でも、ニーズはとてもある。潜在化していることが問題だ。誰かが上手に仕掛ければ、爆発ブームになる可能性はすごくある。
 
 「親亡き後は入所施設」とおっしゃる方の中で、どれだけの方が、もう一方の選択肢である地域生活のシステムや可能性を実際に知った上で選択されているのだろう。入所施設へのニーズの内の一体何%が地域生活という選択を知らされていないためのニーズなのか、厳密に分ける必要性を感じる。
 
 やっぱり、「地域で暮らし続けましょう」と日本で営業を続けましょうか。ボブのレイコーのように、地域生活の良さに気付いていない人のために。

出典
戸枝 陽基
 “季刊誌「ふわふわ」1990年10月 『街の中でふわりふわりと考える』“より


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